川の中がもじゃもじゃ!?~藻類(そうるい)の生い茂った原因を探る~
今日は、川の中に生えている藻類(そうるい)、藻(も)のお話です。
6月から7月にかけて、馬頭高校の横を流れる那珂川が緑色になるほど、カワシオグサという藻類が生い茂っていました。
7月13日午後、藻類がご専門の阿部信一郎教授(茨城大学)をお招きし、カワシオグサが繁茂する那珂川の現状について、コメントをいただきました。阿部先生は、外来種の藻類ミズワタクチビルケイソウの普及啓発リーフレット(https://www.jfa.maff.go.jp/j/enoki/attach/pdf/naisuimeninfo-8.pdf)の作成にも、ご尽力いただいた藻類のエキスパートです。
馬頭高校の佐々木先生とも合流し、まずは、若鮎大橋から下流を観察しました。前日夕方の雨で、30cmほど水位が上昇したことで、糸状のカワシオグサは以前ほど繁茂していませんでした。流芯にもカワシオグサがみられましたが、盛んに石をはむアユもみられ、カワシオグサとアユの好む藍藻(らんそう)とが、せめぎ合っているようにも見えました。
次に、少し上流に移動し、那珂川釣荘前で、川の中に入って藻類を観察しました。カワシオグサのほかにも、コカナダモもみられました。阿部先生が緑色の石を川底から拾ってきて、私たちに見せてくれました。石全体が緑色でおおわれていて、これがカワシオグサの幼時の姿(盤上に広がった仮の根で石に付着している)と教えてくれました(写真1, 2, 3)。
軽くこすったくらいでは除去できず、少々乾かしたくらいでは死滅しないそうです。冬から春にかけて、この緑色の部分から糸状の藻体がのび繁茂(はんも)してしまうと、藍藻や珪藻(けいそう)など、ほかの藻類が生育するすきが無くなるとのことでした。しかし、どういう条件がそろうと石表面に広がった緑色の部分から糸状の藻体がのび繁茂するかについては、川によりけりで、一概には言えないそうです。ただ、繁茂する年、しない年があるということであれば、水質(富栄養化や農薬、工場排水等の汚染など)というよりは、大水を含む水位変動が関係していそうだとおっしゃっていました。
ここから大移動して、那珂川の源流部、板室温泉郷付近の小支流で調査を行いました。ヤマメが高密度に生息している沢でしたが、カワシオグサや外来藻類のミズワタクチビルケイソウがみられました(写真4)。ミズワタクチビルケイソウが最上流部にまで侵入しており、これ以上拡散しないように濡れたウェーダーやタビで、川を行き来しないことが大切です。詳しくは、冒頭ご紹介しましたリーフレットをご覧ください。
帰り道、箒橋から箒川を観察しました。ほぼ全域でカワシオグサの繁茂がみられ、特に流芯で多くみられました(写真5)。先ほどご紹介しましたとおり、カワシオグサは、川底の石や岩盤に強く付着した仮根から糸状の藻体がのびるため、強い流れでも繁茂できるのでしょう。また、水温が上がると、水に溶け込むことのできる酸素量が減るため、酸素供給量のより多い、流芯や白泡のたつ付近で、より多くのカワシオグサが繁茂するのだろうと、阿部先生がおっしゃっていました。
最後に、阿部先生に今後の展望を聞いてみたところ、場所によってはカワシオグサが残るところもあると思われるが、さらに水温が上がると、そのうち、糸状の藻体部分が茶色く変色して枯れて流失し、アユの好む藍藻や珪藻が繁茂してくる場所が増えてくるのではないか、とのことでした。
梅雨がとても短かった2022年。雨による増水がないことで、カワシオグサが異常繁茂してしまったようです。やはり、雨は降るべきときに降らなければ、自然のバランスが崩れてしまうのでしょう。
以上のレポートは、阿部先生にもチェックしていただいた上で掲載させていただきました。