マニュアル実行 2021.10.20

川のなかには、何匹の魚がすんでるの?~釣り人といっしょに調べてみた~

みなさんは、魚って何匹いるんだろう、と川や海を眺めながら考えたこと、ありませんか?

これは、大昔から、人が知りたがっていたことで、むずかしく言うと、「資源量推定(しげんりょうすいてい)」といいます。資源量というと、いかにも、人間目線、上から目線で好きではないですが、そう呼ばれています。

推定には、ものすごくたくさんの方法があるんですが、そのうちの1つに、標識放流法(ひょうしきほうりゅうほう)というものがあります。実は、私は大学時代、水産資源学講座にいて、恩師の松石先生が、虎の巻を作ってくれています。

標識放流法

標識放流法は、かんたんに言うと、自作自演のくじ引きです。魚を何匹か獲って、ヒレの一部分を切って、つまり、当たりくじの目印をつけて、水に戻します。
その後、また、魚を獲ると、そのうちの何匹かに、当たりくじが出ます。例えば、10匹の魚を獲って、ヒレを切って戻し、その後、10匹を獲ってみたら、1匹だけヒレが切ってありました。当たりの率が1/10ということは、最初にヒレを切った数の10倍の魚、つまり100匹の魚がいるでしょう。というのがオチです。

標識放流法 標識放流法

これをアマゴ(ヤマメの亜種)とイワナの棲む清流で、やってみました。

舞台は、山梨県東部を流れる日川です。
2021年6月5日に、電気ショッカーとよばれる、川に弱い電気を流して、魚を一瞬だけ気絶させて獲る手法で、アマゴ127匹、イワナ238匹を獲りました。ヒレの一部を切って、全ての魚を元気な状態で川に戻しました。もちろん、この漁法は一般には禁止されているので、県から許可を得て、専用の道具で捕獲しました。
この調査には、山梨県水産技術センター、峡東漁業協同組合だけでなく、地元の釣り人も参加してくれました。

標識放流法での調査。山梨県水産技術センター、峡東漁業協同組合、地元の釣り人も参加

その後、8月15日まで、釣り人のみなさんに、何匹釣って、そのうち何匹が標識されていたか、川のほとりにある釣り人のたまり場「ペンションすずらん」に報告してもらいました。

標識放流法での調査

104人の釣り人から報告があり、トータルでアマゴ289匹(そのうちヒレ切り64匹)、イワナ392匹(そのうちヒレ切り85匹)が釣られました。なお、日川では、強制ではありませんが、キャッチ&リリースが浸透していて、ほとんどすべての魚がリリースされています。

標識放流法での調査

推定の結果、川幅7.4m、流程(川の長さ)518mに、アマゴ573匹、イワナ1,098匹が生息していることがわかりました。密度にすると1m²あたり0.44匹の魚が生息していることになり、これは、他の川と比べて、とても高い数値であることがわかりました。

アマゴ、イワナの画像

今回ご紹介しました標識再捕法は、水産庁の下記マニュアル(P31)にも掲載されています↓
https://www.jfa.maff.go.jp/j/enoki/pdf/keishigentyousa.pdf

ウチでもやりたい! とお考えの方がいらっしゃいましたら、都道府県の水産試験場や水産課に問い合わせてみると良いでしょう。 これからは、市民科学の時代です。釣り人や魚が好きな人たちと漁業協同組合が手をとりあって、息の長い取り組みができるといいですよね。

今回の調査の様子はYouTubeにもアップしました。ぜひご覧ください。

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